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Group Fight: MOSSA本家による解説(1) - ジャブ編

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2017年2月9日木曜日

スクワットの「正しい」フォームは実は一つではない・・・らしい。その科学的根拠とは。

私たちフィットネス愛好者にとってはおなじみのスクワット。MOSSAのGroup PowerのLegsトラックにおけるメインの種目の一つでもあります。筋トレにおいては「正しいフォーム」が最も重要だとされています。以前ご紹介しました通り、MOSSA本家からも正しいフォームについてアドバイスを行ってくれています。

Group Power: MOSSA本家による解説(1) - スクワット編


では「正しい」とは「何に」対して正しいのでしょうか。おそらく二つの観点があるでしょう。
  • トレーニング目的を効率的に達成するために「正しい」フォーム
  • トレーニング中のケガを防ぐために「正しい」フォーム

後者の観点はあまりに自明であるとして、前者についてつまりトレーニングの目的が違えばスクワットのフォームを使い分けることや「カスタマイズ」が有効な場合もあるということになります。バーベルスクワットはマシンを使わないフリーウエイト種目ですからその自由度が元来は与えられているということですね。今日はそんなスクワットのフォームの違いによって実は効果が異なってくる、逆に言えば望まない効果が出てしまうかもしれないというトピックです。


元ネタにさせていただいた論文です。詳細は以下をご参照ください。




論文では以下の3つのスクワットのフォームの場合について効果を検証しています(下図は各フォームを横から見た図です。論文より引用させていただきました)。











- ノーマルスクワット(Normal squat):私たちがよく行う一般的なフォームです。体を下へ沈めた際に胴体と脛(すね)のラインが並行に近い姿勢となります。股関節も膝関節も適度に屈曲させている姿勢。

- 膝関節主導型スクワット(Knee push squat):体を下へ沈める際に股関節をあまり屈曲させず膝関節と足関節(足首)だけを屈伸させるフォームです。一般には悪いフォームとアドバイスを受けることが多い姿勢ですね。

- 股関節主導型スクワット(Hip drive squat):膝関節をなるべく前後に動かさず股関節と足関節(足首)だけを屈伸させるフォームです。上体がノーマルスクワットに比べて深く屈曲しているのがわかります(背中を丸めたり反ったりしてしまってはもちろんダメです!)。これも一般には悪いフォームとアドバイスを受けることもある姿勢でしょう。


最初に非常に「大雑把」に要点をまとめておきます。

  • ノーマルスクワット:腿(もも)の前面(大腿四頭筋)の強化については股関節主導型スクワットより優位、腿(もも)の後面(ハムストリングス)についても膝関節主導型スクワットよりも優位などのメリットがあり、ケガのリスクを抑えバランスよく強化できる。
  • 膝関節主導型スクワット:腿(もも)の前面の強化に有効。ただし、拮抗筋であるハムストリングスのサポートを得られないため膝関節への負担が大きくなる可能性があり、ケガのリスクに注意が必要。
  • 股関節主導型スクワット:脊柱起立筋(背中)や大殿筋(お尻)や共収縮を利用した腿(もも)の後面(ハムストリングス)と腿(もも)の前面(大腿四頭筋)の強化に有効。スプリントをはじめ現実の多くの競技動作に近い筋活動でトレーニングできる。

安全でバランスのとれたトレーニングのためにはノーマルスクワット、腿(もも)の前面を集中的に鍛えたいならば膝関節主導型スクワット、背中やお尻や腿(もも)をもっと追い込みたいなら股関節主導型スクワット、ということになります。ただし、ノーマルスクワット以外のフォームではケガのリスクも上がるので要注意です(つまり上級者向け)。

筋バランスの目的によって(どこの筋肉を強化したいかが明確な場合)ある程度のカスタマイズが可能ということですね。



ではもう少し詳しく論文の要点を以下にまとめてみます。まず用語の整理をしておきましょう。
  • 下降局面:スクワット動作で体を下へ沈める局面
  • 挙上局面:スクワット動作で体を持ち上げる局面

- 各筋肉へ効果
  • 脊柱起立筋(背中):下降局面と挙上局面の両方で股関節主導型スクワットが優位。このフォームでは上体の前傾角度が深いため体幹を強く保持するため活発に活動。
  • 大殿筋(お尻):特に挙上局面で股関節主導型スクワットが優位。このフォームでは股関節の可動域が他より大きいため大殿筋への収縮要求も高い。
  • 大腿二頭筋(腿(もも)の後面、ハムストリングス):特に挙上局面で股関節主導型スクワットが優位。一般にはスクワットでのハムストリングス強化には限界があるとも言われるが、外側広筋との共収縮が伴うことで大腿二頭筋にも有効な刺激が入っていることが示唆。ハムストリングスの強化には一般に膝関節屈曲(レッグカールなど)を利用するものが多いが、現実の動作では膝関節の屈曲だけが起こるものは極めて少なく、股関節の伸展や拮抗筋である(外側広筋を含む)大腿四頭筋との共収縮を伴う。よって股関節主導型スクワットを利用すれば現実の動作に近い状況下でハムストリングスの強化が可能。
  • 大腿直筋(腿(もも)の前面、大腿四頭筋):下降局面と挙上局面の両方で膝関節主導型スクワットが優位
  • 外側広筋(腿(もも)の前面、大腿四頭筋):膝関節主導型スクワットが優位
  • 中殿筋(お尻):3フォームともに違いはなし。長内転筋とともに骨盤の安定と左右へのふらつきを制御するために活発に活動。

  • 膝関節位置を固定し、股関節の屈曲・伸展のみで行う股関節主導型スクワットの動作特性は短距離走のキック動作に類似。有効なトレーニング方法になりうる。
  • 膝関節主導型スクワットでは体幹はほぼ垂直のまま行われる。そのため脊柱起立筋と大殿筋の活動量が小さい。そのため腰部への負担が小さい方法といえる。
  • 膝関節主導型スクワットでは(大腿直筋や外側広筋を含む)大腿四頭筋の効率的な強化に有利。ただし、膝関節主導型スクワットでは大腿二頭筋(ハムストリングス)の活動量が少なく、拮抗筋である大腿四頭筋との共収縮を伴わないため現実の動作トレーニングにつながりにくく、膝関節の不安定さを招き靭帯などへの負担も増大するためケガのリスクに注意が必要。
  • 足関節(足首)への刺激という観点では、ノーマルスクワットと膝関節主導型スクワットが優位。


- ノーマルスクワットの特徴

  • 大腿直筋(腿(もも)の前面、大腿四頭筋):膝関節主導型スクワットほどではないが、股関節主導型スクワットよりも優位。
  • 外側広筋(腿(もも)の前面、大腿四頭筋):他のフォームと同等に高い活動量。
  • ハムストリングス:膝関節主導型スクワットよりも大きく優位。
  • 脊柱起立筋と大殿筋以外は股関節主導型スクワットとほぼ同等の活動量。
  • 体幹の安定性のトレーニング効果(中殿筋など)は他のフォームと同等。
  • 膝関節のケガのリスクをおさえ股関節および膝関節の伸展筋群をバランスよくトレーニングできるフォーム。下肢筋群全体の強化を目的とするトレーニング初心者にも非常に有効。
これらはフィットネスクラブなどで一般にこのノーマルスクワットのフォームが正しいとされる根拠になりうると思います。


フォームを含めてトレーニングの方法は目的によって変わるまたは調整できる。もちろんケガをしないための正しいやり方(スクワットにおいては、膝とつま先の方向を合わせるや足裏全体で踏ん張るなど)という観点が最も重要であることに変わりはありませんが、「何が絶対的に正しい」という固定観念でとらえるのではなく、「何のためのトレーニング」かをまず意識して柔軟に取り組むことの重要性を改めて考えさせられます。

ただし、スクワットは非常にケガを誘発しやすい種目でもあります。なんらかの「カスタマイズ」がもし必要な場合には、自分の判断だけでは行わず、例えばウェイトの調整などを含めて、必ずトレーナーの方々に相談してから行うようにお勧めします。


一方でGroup Powerでは音楽に合わせた動作が必要な点(ペースを個々人で変えられない)また(グループワークアウトなので)回数を個々人で変えることはできない点などを考慮すると、安全面からもノーマルスクワットのフォームがやはり適当だと考えられます。一方で例えば膝(ひざ)を前後へ動かしすぎる動作では腿(もも)の前面がアンバランスに鍛えられてしまう可能性もあるなど、スクワット動作の筋活動を深く理解するために非常に良い情報でした。

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